2026年3月6日、渋谷区文化総合センター大和田の伝承ホールにて「春風駘蕩」古琴の名手・武井欲生氏の古琴リサイタルが開催され、友惠しづねと白桃房の加賀谷早苗が司会を務め、古琴の遙か音色の道しるべ、その一助を担いました。 武井欲生氏は、1963年中国広東省に生まれ、中国で古琴を研鑽され、1989年来日。日本古琴生風流家元、一般社団法人日本古琴振興会代表理事、映画「パリピ孔明」の古琴指導・演奏等で活躍。国内外での演奏活動を通じ古琴文化の紹介に努めると共に、古琴を次世代へ伝播する活動、後進指導にも精力的に取り組まれています。 第一部「山意」では、中国唐時代の詩人、孟浩然の漢詩「春眠、暁を覚えず」の情景を有する琴曲「春暁吟(しゅんぎょうぎん)」に始まり、山の趣が弾じられ、第二部「水意」では様々な水の表現の実演や「碧澗流泉(ぺっかんりゅうせん)」など古典曲の武井欲生氏の至極の独奏により心鎮まる奥深い響きを堪能しました。第三部「生風雅意」は二重奏となり、「楚歌」(奏者・歌:武井欲生氏、羽下玉風氏)では、おふたりの琴と歌唱が心に沁み、哀切の極みに達しました。また、意欲作の二重奏「大人のアンパンマンマーチ」(三木たかし作曲 Y.TAKEI編曲 奏者:武井欲生氏、章玉寧氏)では琴の音に「ほほえんで生きましょう」との思いが込められ、おふたりの琴の音と共に種から芽生え、花々がやさしく微笑みかけてくれるようでした。 アンコールでは、「梅花三弄」に続き、「一杯やりましょう!」と武井欲生氏の古琴と加賀谷早苗の舞踏による“琴と舞”の共演「酒狂」がサプライズ上演されました。 「酒狂」は、3世紀、中国三国時代の思想家、竹林七賢の阮籍の作曲と伝わります。竹林の七賢は、世俗の権力争いから離れ、竹林の中で酒や清談、音楽を楽しんだ7人の賢人(隠士)。阮籍はその指導的人物であり大酒飲みであったそう。竹林七賢の阮籍の憂いに思いを馳せ、今も戦い続ける世界へのやるせなさが行き交うも、武井欲生氏の軽妙且つ迫真の琴と加賀谷早苗の舞が春風駘蕩とした酒狂を織りなし温かな拍手のなか閉幕しました。 武井欲生氏は、古琴との出逢いから50年。はじめは音を出そうとしていたが、年を重ねるうちに風景を語るようになっていったと述べられました。そして、今年から四季を語るコンサートを企画、2026年は春、秋の風景を、2027年は夏、冬の風景を語られるそうです。次回は、2026年11月25日、同会場で“古琴と琵琶の対話「秋ノ月」~偲ばれる月あかり~”が開催されます。ぜひ、お聴き逃しなく、古琴と琵琶による秋の風景の語らいをご堪能下さい。